【聴脳研コラム2026第5回】聴覚の社会的復権:「ヒアリングフレイル」の全貌と社会的・経済的インパクト
第5章:新たな専門職と教育 — ヒアリングフレイルサポーターの養成
5.1 人材育成の必要性
ハードウェア(comuoon)やアプリ(聴脳力チェック)があっても、それを運用し、高齢者に適切なアドバイスを行う人材がいなければ、社会的な課題解決は完遂しない。中石氏は、既存の言語聴覚士(ST)や医師だけではカバーしきれない、生活の場における「聴こえのサポーター」の必要性を痛感していた。
5.2 アカデミアと連携した教育カリキュラム
このニーズに応える形で整備されつつあるのが、「聴脳検定」や「ヒアリングフレイルサポーター」といった教育カリキュラム、そして大学レベルでの専門教育である。
- 大学院での探求: 中石氏自身、国際医療福祉大学大学院で福祉支援工学分野の修士課程を修了し、「聴脳科学総合研究所」の所長としてアカデミアでの地位も確立している2。
- 専門職の養成: 武蔵野大学や国際医療福祉大学などの言語聴覚士養成課程において、従来の聴覚検査技術に加え、ヒアリングフレイルの概念や最新の支援機器活用に関するカリキュラムが組み込まれつつある6。
- 市民サポーターの育成: 豊中市などの自治体では、一般市民や介護職員を対象とした講習会を開き、「ヒアリングフレイルサポーター」を養成している。彼らは地域の中で、アプリを使ったチェックを行ったり、難聴の兆候がある高齢者に受診を勧めたりする「ゲートキーパー」の役割を果たす。
このように、中石氏の構想は、単一の製品販売にとどまらず、教育・資格・雇用創出を含む包括的な「エコシステム」の構築へと広がっている。
- 第6章:テクノロジーの民主化 — 「みんなの聴脳力チェック」アプリへ続きます
- 筆者:剣崎 雅人(けんざき まさと)
社会課題とテクノロジーの交差点を取材する専門記者。特に、超高齢社会における社会インフラの欠陥や構造的なリスクに鋭く切り込むことを得意とする。従来の枠組みに収まらない新しい解決策やイノベーションに焦点を当て、その社会的・経済的インパクトを深く分析する論調が特徴。